しじみ殻の活用方法

自然と環境を考えたしじみ殻の活用方法研究

研究に至った理由

統計数値によると、国内でのしじみ貝は食材・加工で取り扱い約7,000~8,000トンとされている中、宍道湖では平成28年度は約2,700トンが水揚げされて全国に殻付きのまま出荷され、「身」は食材として消費されますが、その身を守った「殻貝」の大半はゴミとして処分されていると思われます。しじみ貝には身に栄養が含まれている事はもちろん、不要なものとして処理されている殻貝にも私たち人間に必要な物質、【カルシウム】や【鉄】などが多く含まれている事がわかりました。そこで、しじみの殻貝を“健康”につなげることができれば、多くの消費者に新しい提案ができるだけでなく、ゴミの問題にも一役担うこととなり、環境にも貢献できると考え研究してみました。

これまでに得られた研究結果

しじみの殻貝の成分について分析(依頼)してみたところ、そのほとんどが炭酸カルシウムで形成されていることがわかりました【データ(1)参照】。また、殻貝が酸性であることから、アルカリ性のものと化学反応させることができると知り、私たちに身近なものとして“酢”による実験を行ってみました。衛生的面を考え、煮沸殺菌をした殻貝をティーパックに詰めたものを48時間ほど酢に漬け、その後、酢のカルシウム含有量を調べたところ、1,000倍近くの数値に変化していることがわかりました【データ(2)参照】。身だけ消費して、殻貝をゴミとして処分するのではなく、最後は土に還すことが環境保護にもつながるとイトハラは考えています。
※補足/より効果的にカルシウムを溶かしだすために殻貝は細かく砕いてティーパックに入れるといいと思います。砕くときに殻がはねたりして危険ですので、注意してください。

データ(1)

殻の成分分析結果 ※イカリ消毒(株)応用生物学研究所に分析依頼

殻の表面
Ca(カルシウム) 92.3%
Fe(鉄) 4.2%
S(硫黄) 2.5%
Sr(ストロンチウム) 0.6%
Si(ケイ素) 0.3%
Zr(ジルコニウム) 0.1%
殻の裏面
Ca(カルシウム) 99.4%
Sr(ストロンチウム) 0.3%
Si(ケイ素) 0.2%
Zr(ジルコニウム) 0.1%
 

データ(2)-1

しじみ殻を検体(食酢など)に漬けた実験

●分析方法/ICP発光分析法 ●検査機関/日本食品分析センター

検  体 分析結果
米酢 0.0019g/100g
米酢(しじみ殻を漬けたもの) 1.3000g/100g
梅酒 0.0010g/100g
梅酒(しじみ殻を漬けたもの) 0.0461g/100g
梅漬け 0.0443g/100g
梅漬け(しじみ殻を漬けたもの) 0.2530g/100g

殻を酢に漬けると化学反応が起きることが判り、各種検体に殻を漬け、溶解によるカルシウム含有量について調べてみました。

検  体 分析結果
米酢(殻を漬けたもの:上澄み) 1.49g/100g
米酢(殻を漬けたもの:沈殿部) 1.48g/100g

実験の過程で、長期に殻を酢に漬けておくと容器の底に“白い沈殿物質”が留まることが判り、カルシウム単体ではないかと思われましたが、分析により違うことも判明しました。

 

データ(2)-2

殻の粉末を焼成することでのカルシウム比率の変化

●分析方法/ICP発光分析法 ●検査機関/日本食品分析センター

検  体 分析結果
カルシウム量(未焼成のもの) 36.5g/100g
カルシウム量(600℃で焼成したもの) 36.7g/100g
カルシウム量(800℃で焼成したもの) 42.5g/100g
カルシウム量(1000℃で焼成したもの) 60.8g/100g

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